ノベル
延々と連なる廊下と階段とそして水路、古紙の匂いに満ちた図書室、南国の花の香にむせ返るような温室、歳月を経て手ずれの艶を帯びた奥座敷。そんな諸々を懐に抱いた、奇妙で巨大な旅籠。年の頃は、年増の、花の盛りの、あるいはいまだ蕾の、たたずまいなら、儚げな、妖艶な、凛然とした、女たちが幻灯のように入れ替わり立ち替わり現れて。そんな女たちが住まいする、時に忘れさられたような、いずことも知れぬ、旅籠。迷いこんだ青年は、そんな舞台でそんな女性達と、縺れ合い、睦み合い、貪り合い、絡まり合う―――これは、迷いこんだ青年と、旅籠の女たちとの、愛憎と幻妖の物語。
自分が交通事故に遭ってしまうなんて、想像もしていなかった。被害総額、バイクの弁償で約15万円。身体は無事だったが、財布は瀕死を通り越して来世まで手をつける勢い。そこで借金を返す為にアルバイトするハメになった。「Cafe AQUA」駅から数分の少しシャレた喫茶店。美味しいケーキと香り高い紅茶、そして食事も出来るお店。その店では、どこかで見かけたクラスメイトが笑いながら可愛い制服に身を包んでいた。――季節は秋。不意の出会いの中で、俺の物語はこれから始まろうとしていた。
俺が住むのは、単線が1本あるだけで他には何もない小さな町。いや、耳が潰れるほどにやかましく鳴くセミたちもいたか。俺・高村由利は、この町で姉のほのかと二人で暮らしている。天体観測が趣味で、将来宇宙飛行士になりたいと考えている、平凡な学生だ。この町は何もないが、それだけに空が綺麗で、夜になると満天の星空になる。特に、裏山にある池の畔で見る光景は、どこの空にも負けないぐらいの光景だ。澄んだ水面が星空を写し、宇宙にいるような気分になる。今日も、星を見るために裏山へと足を伸ばしてみたが、俺しか知らないはずの秘密の場所には既に人影があった。和服を着て雰囲気は違っていたけれど、彼女はクラスメイトの九龍明日羽に間違いな...
「ここがものべの!?なーんにも無いねぇ」高知の山深い寒村、茂伸村へと六年ぶりに帰省した主人公、沢井透と、ふるさとのことをすっかり忘れてしまったらしい妹・夏葉。都会はおろか、他の人里からさえ隔絶された古びた空気の中、家守妖怪“あかしゃぐま”のすみ、おさなじみのありす、傘妖の飛車角――懐かしい面々との再会は、錆ついていた記憶の時計を動かし始める。大掃除、山遊び、水普請、畑仕事、牛鬼の来訪……少しも変わらぬ茂伸の暮らしを重ねるうちに、やがて、村に伝わる土着信仰“ひめみや流”の夏祭りの夜が訪れる。夜行市ににぎわう境内に響く触太鼓は、祭りのクライマックス“面舞い”の始まりを告げるもの。ちぐらとヒトカタとに守られた...
主人公はある産婦人科の中年医師。やってくる患者は普通の主婦妊婦、ヤンママ、更年期障害のおばさん等々。地域柄なのか主人公の好みの若い患者などまったくといっていいほど来ない。そんなある日、珍しく来た現役JKの患者。ここら辺では見掛けないお嬢様学校の制服を来ていた。「産婦人科」という事で、あまり流行っていない、学区から少し離れたこの病院を選んでこっそり来たようだ。しかも、診察時間を少し過ぎた時間に来たので他の看護婦達は皆帰り支度を始めていた。ここ最近では珍しい黒髪のロングヘアで清純そうなJK。しかもまさに主人公好みで可愛らしい。「ここ2〜3ヵ月生理不順で…どこか悪いんでしょうか?」恥ずかしがりながらも、不安な顔で尋...
高鳴るリズム響けばキラキラ光る前島鹿之助はミッション系の学校『欧美学園』に通う学生だ。部活にも顔を出さず、受験勉強にも身を入れずにアルバイトにばかり精を出すちょっとダメな毎日を送っている。そんな彼が、バイト先でかなり変った女の子『椎野きらり』と出会い思いがけずパンクバンドを結成してしまうところから、鹿之助の物語が始まるのであった。バンドのメンバーは、鹿之助、きらり、幼馴染の『石動千絵』、それから病弱な資産家令嬢の『樫原紗理奈』。彼らは、存在感のほとんどない、もう廃部も決定してしまった『第二文芸部』の部員たちである。最後の晴れ舞台、文化祭で目立つために立ち上がったのだ。無謀かと思えた挑戦だが、エキセントリ...
主人公は中年間近の独身サラリーマン。姪っ子の「美冬」とのラブホデートが続いているある日、美冬と別れた後、もう一人の姪っ子「愛菜」が待ち伏せていたのです。「美冬お姉ちゃんを返して!」愛菜は、自分の母(主人公の妹)から「ダメな兄」という噂を聞いていたので、美冬が主人公を好きな理由が分かりませんでした。このまま愛菜を放っておくと、美冬との関係が親戚中にバレてしまう。美冬も説得しますが、どうしても愛菜は聞き入れようとしません。ほとほと困った美冬は、最後の手段を思いつきます。「それじゃこれから3人でホテルに行きましょう!」美冬との愛の生活は、終わりを告げてしまうのか?三人の関係は今後どうなるのでしょうか――