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作品情報
どこかで見たような世界。どこかで聞いたような者達。けれど、誰も知らない物語。夜は混沌と戦乱の時代。戦う力を持たぬ者達が騎士に縋り、騎士は従える王にその身を捧げ、王は民の為に己が力を振るう。それはアーサーの測位をきっかに戦いの口火が切られる事となる。だが、アーサーは数多の戦場を駆けめぐり、敵対する全ての王に勝利し、自身を含めた12人の王の頂点に立つ。先代の血を引き台座から剣を抜いたアーサーは、王足り得ると勝利をもって王国中に知らしめた。そして時代は平穏へと移り始める。奪う戦いから育てる戦いへと、国を守るために剣ではなく政治が力を持つ時代へと。隣国の姫と結婚をしろ。アーサーとログレスを導き続けた女魔道士マーリンは、従える王に対してさえも命令口調でそう告げた。彼女の数多の助言を受け入れてきたアーサーだったが、今回ばかりは飲めないと頑なに拒む。だが国の平和を強固なものにするため、どうにか政略結婚を推し進めたいマーリンは、彼がなぜそこまで抵抗するのあを考えた。導き出された結果は、「女性に慣れてないから怖いのだろう」というものだった。一国の王がそんな有様では困ると半ば呆れたマーリンは、この際我が主には人並みの女性経験でも積んでもらおうかと、ある計画を思いつく。幸いアーサーの周りには、円卓の騎士として名高く、人間的にも充分魅力的な女性達が何人もいた。あとはほんの一押しさえあれば、艷を帯びる関係に転じる可能性も充分にある。そしてその一押しが、作為あるもので悪い道理はどこにもない。なんだか、面白くなりそうだ。状況をそう動かすのは紛れもなくマーリン自身なのだが、その流れがことのほか興味深くなりそうな事実にほくそ笑んだ。その笑がもたらす悲劇と喜劇を知る者は、まだ誰もいない。
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