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愛奈-あいな-
作品情報
数年前に家族を事故で失い、孤独の身となった主人公。彼に残されたものは、祖父の代に建てられた古びた家と財産。それ目当てに言い寄ってくる、「親戚」と称する会ったことのない大人たちの煩わしさと不信感から、主人公は誰にも頼ずにこの屋敷で一人生きてきた。そしていま、突然家の前に一人の少女が一通の手紙を携えて佇んでいた。7月21日、梅雨の名残が霧のような雨となって少女の髪を濡らしている。何も言わずに少女が差し出した手紙には、数年前のその「親戚」の名前と、少女の名前、境遇、そして親戚として少女の扶養義務を果たせとの旨が記されてあった。少女は主人公の遠縁にあたり、主人公と同じように両親を事故で失い、自身もその影響から足が不自由になってしまった。杖をついてしか歩けない身体になった彼女は、親戚の家々をたらい回しにされたあげく居場所を失い、同じ境遇の主人公の元までたどり着いたらしい。体よく押しつけられた形ではあるが、その少女を見た瞬間妹の面影を感じた主人公は、少女を受け入れることにした。少女の名は愛奈(あいな)。事故のショックから立ち直れないせいか、あるいは大人たちの心ない行動に翻弄されたせいか、少女は涙も微笑みも見せず、ただ無表情な横顔を湛えていた。
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